朴弘文

神戸大学大学院 博士研究員  朴 弘文

 祐伸科学教育振興会には大学院在籍時に物心両面でのご支援を賜り,心より感謝申し上げます.私は 2010年3月に神戸大学大学院経営学研究科にて経営学の博士号を取得致しました.博士論文の研究テーマを簡潔に申しますと,「労働市場の三層化」です.リーマンショック以降,派遣切りやワーキング・プア,格差社会等の用語がメディアでも頻繁に登場するようになりましたが,現在,日本では労働者のおよそ3人に1人(ちなみに韓国では2人に1人以上)がいわゆる非正規労働者として働いており,「雇用の二極化」が叫ばれています.
 博士論文ではこの問題の解決に向けて,「内部労働市場(企業内部に形成される正社員を対象とした労働市場)」と「外部労働市場(企業外部の労働市場)」との間に第三の労働市場を・・・要するに既存の「正規雇用」でも「非正規雇用」でもないハイブリッド型の雇用形態を設けることが,労使双方にとって経営合理的であることを理論的・実証的に研究しました(字幅の関係上詳しくは書けませんが,最近金融業や小売業で増えている地域限定社員,あるいは育児・介護中の女性を対象とした短時間社員制度などがその例であり,理論ベースは昨年度のノーベル経済学賞受賞者であるウィリアムソン教授の「取引費用の経済学」です).
 現在,私は神戸大学の博士研究員として民間企業から依頼される様々な課題の研究・調査に取り組んでいます.たとえば,小売業の仕入効率化と組織変革,海外進出企業における現地人材の活用と育成,製薬企業の女性営業員の定着・活躍推進,人材派遣企業の戦略立案等です.今後も学術研究や産学連携事業を通じて,企業や地域社会,さらには祖国に貢献できればと考えています.

「科学と未来」第11号に掲載

 

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